手業とは思えない緻密で精巧な紙型

伊勢型紙の世界とは

伊勢型紙とは、友禅、ゆかた、小紋などの柄や文様を着物の生地を染めるのに用いるもので、長い歴史を誇る伝統的工芸品(用具)です。

突彫り、縞彫り、錐彫りなど、それぞれ専門の職人が手がけます。

元になる紙は、和紙を柿渋で貼り合わせたものを1週間ほどいぶして完成です。これで薄くて、強い腰と防水効果を持ちます。

奈良時代にこの技法は開発され、江戸時代、紀州藩の保護を受けたことから、伊勢地方で発展しました。

染色工場からあずかった大量の型紙を、管理した経験があります。枚数を数えるというのではなく、平積みした「1mの山が○あります」など山の数を報告していました。これだけの枚数を限られた職人さんが手で彫るわけですから、どれだけの時間とエネルギーが必要だったのでしょうか。この山を見ると職人さんの圧縮された時間に圧倒されていました。とても人間業とは思えない緻密さです。もちろん1つの間違いも許されません。紙の収縮を嫌い、工房には冷房なしという話も聞きました。

教材として、勉強にしたいと購入されました人に聞くとあまり緻密なものは、技術もないし、それ以前に道具=彫刻刀がないので、挑戦もできないのだそうです。

専門学校の先生が、教材にしたいと連絡が来たこともありました。この話は残念ながら予算が合わずかないませんでした。最も高額な価格は、ヤフオクで(10万円/100枚)くらいしていたそうです。

でも職人の技量費用はあまり評価されていなく、歴史的資料としての価値に留まっているようで、少し残念な気もしました。工業製品の部品というポジションのせいなのでしょう。